星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】


「おいっ。

 雪貴、風邪引くぞ」


肩を揺すりながら声をかける。

何度目か、肩を揺すった時、
もぞもぞと動いた雪貴が、寝ぼけ眼のまま
体をゆっくりと起こす。



「おはよう、雪貴」


「あっ、託実さん。

 おはようございます」

「帰らなかったのか?」


俺の言葉に雪貴は
目をこすりながら頷いた。



「託実さんこそ、
 こんな時間にどうしたんですか?」

「少し隆雪と話したくてな」

「なら、兄貴と二人で。
 俺、ちょっと顔洗ってきます。

 シャワールーム借りれそうなら
 借りたいし。

 話終わったら、連絡ください」


雪貴はそう言うと、
俺に遠慮して、着替えの手荷物を片手に
病室を出ていく。

一人残された病室。



眠り続ける隆雪を黙って
見つめ続ける。






隆雪、香港行ってくるな。

ファンの皆が、
あの場所で……隆雪じゃなくて、
ありのままの雪貴を受け入れてくれたら……。

お前には悪いけど、
俺はAnsyalのリーダーとしてそんな風に思うよ。


Takaが二人でもいいだろ。

隆雪も雪貴も、
俺らAnsyalが誇る最強のギタ-リストなんだからな






二人きりになった病室で、
俺は隆雪に話し始める。


俺たちが、本当の意味で
【Ansyal】になるために
絆を深めた香港。


あの場所で……雪貴も、
正式にAnsyalに迎え入れたい。


自分の心をすぐに隠して、
何も言わないアイツ。
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