星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
「おいっ。
雪貴、風邪引くぞ」
肩を揺すりながら声をかける。
何度目か、肩を揺すった時、
もぞもぞと動いた雪貴が、寝ぼけ眼のまま
体をゆっくりと起こす。
「おはよう、雪貴」
「あっ、託実さん。
おはようございます」
「帰らなかったのか?」
俺の言葉に雪貴は
目をこすりながら頷いた。
「託実さんこそ、
こんな時間にどうしたんですか?」
「少し隆雪と話したくてな」
「なら、兄貴と二人で。
俺、ちょっと顔洗ってきます。
シャワールーム借りれそうなら
借りたいし。
話終わったら、連絡ください」
雪貴はそう言うと、
俺に遠慮して、着替えの手荷物を片手に
病室を出ていく。
一人残された病室。
眠り続ける隆雪を黙って
見つめ続ける。
*
隆雪、香港行ってくるな。
ファンの皆が、
あの場所で……隆雪じゃなくて、
ありのままの雪貴を受け入れてくれたら……。
お前には悪いけど、
俺はAnsyalのリーダーとしてそんな風に思うよ。
Takaが二人でもいいだろ。
隆雪も雪貴も、
俺らAnsyalが誇る最強のギタ-リストなんだからな
*
二人きりになった病室で、
俺は隆雪に話し始める。
俺たちが、本当の意味で
【Ansyal】になるために
絆を深めた香港。
あの場所で……雪貴も、
正式にAnsyalに迎え入れたい。
自分の心をすぐに隠して、
何も言わないアイツ。