星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
何故だろう。
彼女を知れば知るほど理佳の存在が
強くなっていく。
封じ込めていた理佳との時間が
こじ開けられていく。
その時間に触れられたくないはずなのに
彼女のことが気になって一線を引くことすら出来ない。
「楽しみにしてるよ」
ようやく搾り出した言葉。
「有難うございました。
私、唯香のところに行きますね」
ソファ-から立ち上がって笑いかけると、
彼女は親友の元へと駆け出していった。
飛行機はフライト時間通りに
俺たちを乗せて空を翔る。
空の旅の後、俺たちを出迎えたのは
蒸し暑い香港独特の空気。
高温多湿の気候の中、
移動予定のバスへとファンよりも先に
到着すると出迎えの支度をする。
二台のバスにメンバーが
分かれて乗り込む。
抽選で引いたのは、
百花ちゃんの乗る一号車。
一号車。
俺と十夜。
二号車。
Taka・祈・憲。
一号車は、十夜が場を
盛り上げてくれるだろう。
俺は盛り上げるのは正直苦手だ。
問題は二号車か……。
不安そうな二号車の三人を横目に
十夜と一号車のもてなし準備。
ファンが乗り込んだバスに
二人で乗り込むと車内に歓声が湧き上がる。