星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
思う存分、買い物をしてタクシーでホテルへ。
ホテルへ辿り着いた頃には3時前。
私がホテル前でタクシーを降りたとき、
後ろにもう一台のタクシーが止まった。
思わずそのタクシーに視線を向ける。
タクシーの後部座席から姿を見せたのは、
託実。
「……託実……」
思わず名前を紡いでしまった私に、
笑みを浮かべて近づいてくる託実。
「百花ちゃん、
凄い荷物だね」
そう言って、私の手から荷物をスーッと
奪い取って持ってくれる。
「そっ、そんな。
託実さんに持ってもらうなんて……」
「別に俺が持ちたいって思っただけだから。
それに足……、空港で倒れたあの後から調子どう?
痛みが残ってるようだったら、病院に」
心配そうに見つめる託実。
「あっ、あの時も言ったのに、まだ気にかけてくれてたんですか?
気にしないでくださいね。
こうやって買い物出来る程度には元気ですよ。
100万ドルの夜景、どうでした?
私も狙ってたんだけどなー」
そう言ってお道化るように、
託実に向かって話してみる。
託実の反応を試すように……。
すると次の瞬間、
私は託実の腕の中に背後から包まれる
バカみたいにドキドキしてる心臓。
「あっ、ごめんごめん。
俺も……百花ちゃんと行きたかったって言ったら?」
声が聴きとれるギリギリくらいのトーンで
耳元で囁く託実。
その声に驚いて反射的に体が硬直する。
そんな私の反応に気が付いたのか、
託実の体はゆっくりと私から離れていく。
「ごめん……百花ちゃん。
まだ暫く俺は起きてるけど、
100万ドルの夜景とはいかないけど、
部屋来る?」
託実からの突然の言葉に
思わず、時間が止まる。
今、部屋に来るって
託実……言ったよね……。
夢のような言葉に
私はフリーズしたまま。
「百花ちゃん?」
託実の言葉で現実に引き戻された私は
反応するように頷いた。