星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
8.惹かれていく -託実-
FC旅行最終日。
早朝からホテルの部屋のドアをノックする音が聴こえた。
ベッドに沈んでいた重い体を、
引き上げるように体を起こすと、
部屋のドアを内側から開けた。
「託実、話があるわ」
そう言いながら、見るからに眉間に皺を寄せて
入って来るのは、Ansyalのマネージャーを大学時代から手伝ってくれる
東城実夜【とうじょう みや】。
入り込んできた実夜の背後で、
カチャリと音を立ててドアが静かに閉まった。
「託実、私が此処に来た理由、
貴方ならわかるわよね。
隆雪の親友の貴方が……
今のこの時期に、何てことしてるの?
ファンの女の子を自室に連れ込んで。
隆雪が大切にしてるAnsyalを潰したいの?
ゴシップ誌のカメラマンが来てたらどうするのよ?
ただでさえ、Ansyalは注目が高いのよ。
隆雪が交通事故で眠りについたままの現状も世間は知らない。
ファンを悲しませないように欺いたことが、ファンの為だと言うなら
最後まで守りなさいよ。
Ansyalのリーダーとして隆雪から意を任されてる貴方の軽はずみな行動、
私は一人の人間として軽蔑するわ。
最低よ。
Ansyalためにあの子の存在は目障りよ。
もし貴方が、あの子に執着を続けるようなら
私は迷いもなく、あの子を消すわ。
隆雪の宝物なのよ……。
親友の貴方が、軽率な行動で壊していいものじゃないの。
貴方にはAnsyalを守る義務があるのよ。
それだけは忘れないで。
今回の一件、社長と会長には報告させて貰うわ」