星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
【託実さん、すいません。
俺の担任……えっと、ドセンで応援してくれるTakaファンの唯ちゃんなんですけど、
託実さんからの着信見られました。
今から兄貴の元に連れていきます】
そんな翌日から始まった、全国ツアー。
移動に移動を重ねた強行スケジュールに、
何とか体調を持たせながら、夏を送り続ける。
LIVEの時間は真剣に、完ぺきにこなし続けるTakaとしての雪貴。
だけどステージを終えて移動時間になると、自分の世界に閉じ籠っていく雪貴。
そんな雪貴の状態に実夜もメンバーも気遣いながら、
ステージをこなし続けた。
そんな地方公演最終日。
ついに雪貴の身に限界が起きた。
いつもの様にリハを終えて楽屋で過ごす時間、
ふいにガシャンと言う音がして俺たちはその音の方へと向かった。
駆けつけた時、
雪貴は楽屋の鏡を割って
その拳から紅い血を流してた。
「Taka、何してる?」
駆け寄って雪貴の腕を掴み取る。
床にポタポタと落ちては
溜まっていく血液。
「十夜、救急セット」
慌てた俺の声にすぐに十夜は兄さんたちが用意してくれてた
救急セットを手に駆け付ける。
十夜からの自分の携帯で裕真兄さんに連絡して指示を仰ぐ。
裕真兄さんの指示通りに、目で見える鏡の破片をピンセットで取り除いて
消毒液で消毒を終えると傷口をガーゼと包帯で覆って一息をつく。
その途中、アイツの体が力なく崩れ落ちた。
受け止めた時に感じだのは異常なまでに熱い体温。
「雪貴?」
狼狽える俺の隣、十夜が体温計を差し出しながら
すぐに携帯で何処かに電話を繋ぐ。
雪貴を抱き上げて、楽屋のソファーへと横にすると
そのまま体温計を耳にあてて瞬時に体温を確認する。
39度近い体温。
「託実、グランに電話繋いどるから。」
そう言って十夜から託された電話の向こう、
裕兄さんの声が聞こえた。
「託実、伊吹から話は聞いたから。
手渡してる袋の中に、鎮痛剤があると思うからそれを飲ませて
水分補給をしなから休ませること。
雪貴君は、本人が望むまでは今日のステージは休ませること。
ストレス性たど思うけど、熱が下がらないようだったら
もう一度連絡を。
私は近場に居るから後から立ち寄るよ」
そう言って電話は途切れる。
雪貴を眠らせたまま、Liveを始めたその日、
アンコール前に薬の効果が熱が下がった雪貴が
ステージに姿を見せる。