星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】

学生同士のきままな時間じゃないんだからっと
最近、春から五カ月近く経って諦めにも似た感覚で受け入れた
今の親友との距離の形なのかななんて、それ以上は介入しなかった。


8月20日。
私がチケットを手に入れた公演も今日をいれて残すところ2日。

携帯からAnsyalのオフィシャルサイトにとんで、
メンバーたちが交代で綴ってるBLOGを覗く。

会場の雰囲気だけをブログ経由で楽しみながらも、
その日もLIVE会場には足を向けられなかった。

お休みを貰っていたにもかかわらず、急きょ仕事に出て
その帰り道、唯香のマンションに押しかけてみようと心に決めた。


居なかったら居なかった。
居たら……一緒に久しぶりに遊ぼう。



親友なんだから……
やっぱり寂しくなった時は傍に居て欲しい……。


声が聴きたい……。





仕事を早々に終えて、愛車で何度も通いなれた
唯香のマンションへと向かう。



マンションの来客用駐車場に車をとめて、
唯香の部屋へと続く階段をかけあがる。


部屋の前、チャイムを鳴らして唯香の反応を待つ。


一度目チャイムを鳴らしても反応はない。


だけど唯香の部屋は、
防音室が完備された音楽家の為の1DK。

外には漏れてこないけど、
ピアノを演奏してるのかもしれない。

そんな風に思った私は、
その後も、二度・三度といつもと同じように
チャイムを鳴らし続けた。


何度目かのチャイムの後、

「はいっ……」っと弱々しい唯香の声が
スピーカー越しに聴こえる。


「良かった……。
 唯香、生きてた……入るから開けて」


唯香の弱々しい声が気になりながらも、
唯香の声を聴けたことに安堵する。

「ごめん。 動けない」

そうやって会話を切り返す唯香。


夏風邪でも引いて体調崩してるのかもしれない。


そんな風に思いながら、

「了解。
 鍵使って入るからね」

っと切り返して私は鞄から預かってた
唯香の部屋の合鍵を使ってドアを開けた。



唯香は一人暮らし。


大学時代にもインフルエンザで音信不通になって
動けなくなってところに遭遇して、入院コースにまでなった。

それ以来、音信不通になった時に部屋を覗けるようにと
鍵は託されたものだった。


ドアを開けて、びっくりしたのは
カーテンを閉め切った真っ暗な部屋。


部屋中に充満するアルコール。

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