愛してるの伝え方

職員室でスリッパを借りて、教室へ向かった。
教室の窓際の私の席には藤岡さんが座っていた。

「おはよう雅!」

「おはようございます」

「瀬戸も大変ね。雅は巻き込まれたりしてない?」

「私は何ともないですよ」

教室の窓から、瀬戸くんが女子に囲まれていた所も見えたのだろう。
今は校庭に誰もいないけれど。

「つ、疲れた…」

ガラッと教室のドアを開けたのは瀬戸くんだった。
笑顔をつくれないほどに疲弊しているようだ。

「もてる男はつらいわねぇ」

席に着いた瀬戸くんに藤岡さんが声をかけた。

「あーもう死にそう。帰っていいかなー」

「帰りたいなら帰ればいいんじゃない? 今日は調理実習だしねー」

藤岡さんは瀬戸くんに笑顔を向けた。
瀬戸くんは首を何度も横に振る。

「そうだ、それがあった!
絶対に帰らない! ミヤちゃんのエプロン姿を見るまでは!」

何故か瀬戸くんが元気になった。
…なんとなく気持ち悪い。

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