世界一遠距離恋愛
「…俺、死ぬって言ったじゃん?」
「…うん、一年生きれるか生きれないか…でしょ?」
「おう、よく覚えてんな。いい子いい子。…そんでさ、言っただろ?脳の病気って。それってどういう事か分かる?」
「…手の施しようがない、って事?」
「まぁーそうかなぁー。手術難しいらしいし。」
「やっぱり…そうだよね。」
…つまり透くんはもう助からない。確実に死を待つしかないって事でしょ?
「…俺の病気は日に日に悪化していく一方なんだよ。実はな…もう秋まで生きられるかすら危ういんだ。」
「えっ…?頑張れば一年生きる事が出来るんじゃ…?」
「あの後病院行ったら、な。あー…クソ、何でこんな事になっちまったんだよ…。」
頭を抱えて俯く透くんに、あたしは何も言えなかった。透くんがいない一年後をあたしなりに想像して、万が一…最悪の場合、なんて考えていた。でも…もしかしたら早いと半年後には透くんがいなくなってしまう。そんな…時間がないよ。
「ごめんな?気分悪くなってない?」
「…ううん、大丈夫。」
「…そっか。なら…いいんだ。」
こんな時まであたしの事を心配する彼の優しさに思わず涙が出て来そうなのを堪えた。…泣きたいのも、辛いのも、あたしなんかより透くんの方が何倍も強く感じてる。もしあたし自身半年後に死ぬ事になったら…こんなには落ち着いていないだろう。
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