世界一遠距離恋愛
「…受けて、欲しいな。手術。」
昨日の公園の、同じベンチ。座り方も昨日と同じ透くんの右にあたしが座る。昨日と違うのは、噴水の側に若い夫婦と、小さな女の子がいる事だ。あたし達の間に流れる沈黙の時間を微笑ましい会話が埋め合わせてくれるかの様に。
「…君ならそう言ってくれると信じてたよ、絵里子。」
透くんはあたしの言葉に表情を緩めた。
「…もし、助かってずっと生き延びる事が出来る可能性が少しでもあるとしたら…あたしはその可能性を信じたいな。」
この答えに至るまでにあたしはこれまでに無いくらい悩んだ。二択の選択肢に悩んだのなんて、ショートケーキとモンブランのどちらを買うか、とかテストの選択問題で消去法を使って残り二個までに絞った時とか、くだらない事ばかりだったから。その時のあたしといったらショートケーキを選んで中に大嫌いなレーズンが入っていて後悔し、間違えた方を選択して盛大にバツをもらって公開する。二択の選択に満足した事など一度もない。だけど…今のあたしの選択は正しいと思っている。昨日家に帰ってからずっと考えて決めたのだから。
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