世界一遠距離恋愛
「…ねぇ、透くんって時々空見上げてニヤニヤしてるけどさ、何考えてるの?」
「え、ニヤニヤはしてなくね!?」
「でも他になんて表現したらいいか分かんないんだもん。」
「仕方ねぇ奴だな…。」
質問の仕方を考える時間がなくて意味不明な事を聞いた様にも見えるが、聞きたい事は真剣だった。時々見せる空を見上げて微笑んだりするあれ。一体何を思っているのかな…なんて思って。
「俺が空を見上げる時ってのは大抵絵里子と一緒にいれない時間を想って悲しいなーって思う時なんだよな。」
「…あたしと過ごせないの想像してニヤニヤしてんの?」
「だからニヤニヤしてねぇって!そう見えるのかもしれねぇけど、俺は自然とそうなってんじゃね?」
「ふぅん…。」
案外普通だった。もっと…複雑な何かを考えているものだとばかり思っていた。なんだ、結構可愛い事考えてるじゃん!人の事可愛い可愛い言えたもんじゃないね!
「…手術の日な、花奏が手術室の前にずっといてくれるんだって。」
「へぇーっ。良かったじゃん。」
透くんは花奏に相当の信頼を抱いているのだと思う。花奏が手術の時に傍にいてくれると語る透くんは安心しきった面持ちをしていた。
「本当はお前にも傍にいて欲しいんだけどなー…。」
透くんはそこまで言うと、一度言葉を失った。俯いている彼から表情は伺えない。…何?何を考えてるの?
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