世界一遠距離恋愛

透くんのいない教室で過ごすと言うのは予想以上に退屈でつまらない。クラスの子は皆静かで驚く程勉強が集中できると喜んでいる人もいるけど、あたしはやっぱり透くんがいないのは寂しい。授業中先生に頼まれて透くんを静かにさせるのも、いつも手作りで作って持って来たお弁当のおかずを必ず一つ取られる事も、必要以上に頭を撫で回される事も…普段当たり前に行われて来たことが突然なくなったかと思うと…やっぱり寂しい。
「絵里子ちゃん…最近元気ないよね。大丈夫？」
「んぇっ？大丈夫だよ？」
「ホントに？無理しちゃダメだよ？」
「…うん、ありがと。」
さくらちゃんは毎日あたしの元気がないと心配してくれる。気を遣って頭を撫でてくれたり、お菓子をくれたりする。
「本山！またボーッとして！最近上達して来たかと思えばまたこれか！」
「すっ…すいませんっ！」
「ったく…来週大会だぞ？悔いが残っても良いのか！？」
大会が近いにも関わらず、部活も全然集中できない。…ごめんなさい、監督。大会よりも大切な事がもっと先に控えてるんです。
こうして毎日浮ついた生活を送り、時間はあっという間に過ぎて行った。…透くんの手術当日。遂にこの日がやって来てしまった。