世界一遠距離恋愛
「そう言えばお兄ちゃん、透くんってあたしの事一年生の時から知ってたって言ってたじゃん?」
「おー、知ってた知ってた。」
「それってさ、どういうきっかけであたしを知ったかって分かる?あたし達、クラスも違ったのに…。」
…ずっと気になっていた。透くんがあたしみたいな特に特徴もない人を知った理由。
「…お前、花奏ちゃんって子とは中学から一緒だったんだろ?」
「うん。一緒だったよ。」
「まぁ一番の理由はそこかな。花奏ちゃんがもう中学生のうちから秋風に絵里子を紹介してたんだ。」
「そんな前から…。」
「そう。花奏ちゃんの話から性格も全部把握してたし、写真で顔だって確認してたみたいだぜ。」
写真…中学の時に撮った写真なんてマトモな物が一枚もない記憶しかないんだけど。
「まぁその頃からあいつ、お前の事好きだったんだよ。」
「えっ…そうなの?」
「だって考えてもみてみろよ?あれ程天才級に学力持っててここら辺じゃ断トツで頭の良い中学通ってた奴が普通わざわざ高校のレベル一つ落とすか?」
「…それってもしかして…。」
「ああ。あいつはお前に会いにこの高校に来た。」
思わずドキッとしてしまった。確かにもう一つ上のレベルの高校目指しても良かったんじゃないのかなぁ、なんて考えた事もあった。…あたしの為だけに自分の学力無駄にするなんて…。
「ま、元からあいつ勉強嫌いらしいし高校ではちょっと楽したいとか思ってたらしいからなー。ちょうど良かったんじゃね?」
「勉強嫌いなのに出来るとか…憎いわぁ…。」
透くんに対して少々苛立ちを覚えた所に、あたしの携帯が鳴った。…花奏からだ。
「手術中何かあったら…電話くれることになってるんだ。」
「…そうか。俺が傍にいるんだから落ち着いて聞くんだぞ?」
「うん、分かった。」
時計は夜の十時を回っていた。夜中に終わる予定の手術で今のタイミングの電話は良い報告ではない事くらい容易に想像できた。…それなりの覚悟はできている。あたしは通話開始ボタンを押した。
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