世界一遠距離恋愛

学校に着くと早々に花奏に飛びつかれた。
「絵里子！会いたかった！」
「花奏ー！あたしもだよーっ！」
…花奏、目の下にクマ出来てる。きっと昨日は寝ないでずっと病院にいたんだ。
「絵里子、平気？ちゃんと寝た？」
「寝たよー…お陰様で元気だもんっ！花奏こそ人の事言えないでしょ！目の下にクマなんか作っちゃって！」
「私の事はいいのっ。私はね、透の事も心配だけど絵里子の事だって心配してるんだよ？睡眠不足で倒れたりされたらたまったもんじゃないわ。」
「嬉しいけどあたし一応花奏と同じ高校生だからね？夜遅くまで起きてても平気だからね？」
「あら、どの口が言うのかしら。」
花奏がふふっと笑ったのに頬を膨らます。…眠そうだけど何とか元気そうで良かった。きっと今日の授業は爆睡だろう。
「じゃあ…透の目が覚めたって連絡が来たらすぐに来るね。」
「うん、よろしくね。」
花奏はそう言って一度あたしの頭を撫でて自分の教室へ帰って行った。…きっと花奏は昼休みあたりに教室へ走って来て報告に来る。その時の光景を早くも脳裏に描いた。…透の目が覚めるの、楽しみだなぁ。早くお見舞いに行かないと。もう一週間以上電話だけで会ってないからなぁ…まるで遠距離恋愛みたい。早く会いたい。そして…想いを伝えたい。

…しかし、花奏が放課後まであたしの教室へ来る事はなかった。