世界一遠距離恋愛
「いいから絵里子に会わせろよ!俺は絵里子に会いてぇんだよ!」
「黙れ!約束守らない奴に会わせる絵里子はいないんだよ!」
透と花奏の言い争いは収まるどころかヒートアップしている。…病室壊してたりしないかな?
「呼んでますよ、絵里子さんの事。…ふふっ、あまりに秋風くんの口から聞いたもので名前覚えちゃいました。」
看護師さんはそう言って少し照れ臭そうにする。…あたしが花奏やなぎちゃんに透の話をする様に、透はきっとこの看護師さんにあたしの話をしているのだろう。嬉しそうに話す透の姿が絵に描いたかの様に思い浮かぶ。
「次約束破ってみろ!絵里子私の家に連れて帰って二度と透には会わせないから!」
「ぐっ…何だその屈辱は…!退院しても会えないって事か…!?」
なんかあたし花奏の家の子になる予感!?いや、きっと透がしっかり約束を守ってくれるから大丈夫なはず…花奏の家に住むのも悪くなさそうだけど。
「…よし、絵里子ー?おいでー?」
数秒前の声よりも三オクターブ程高い花奏の猫なで声が聞こえる。
「白橋さんも秋風くんに負けないくらい絵里子さんの事好きなんですね。…ごゆっくり。」
看護師さんはそう言って頭を深々と下げて行ってしまった。…最後の「ごゆっくり」はいらないと思う。いや、ゆっくりして行くけどさ!
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