世界一遠距離恋愛
「…透?昨日約束した通り、ちゃーんと今日も会いに来たよ?昨日は少し辛そうな顔をしていたけど…今は辛そうな顔してないね。良かった。…しばらくバイバイだねっ。でもあたし…透の事、ずっと好きだから。天国にいる貴方と…世界一の遠距離恋愛をしようかな、なんて。…じゃあね、透。おやすみ。あたしもしばらくしたらそっちに逝くから。」
もう二度と返事が返って来る事がない透に向かって言いたい事を言い切ったあたしは、持っていたお花を…右手に持たせてあげた。あたしの涙を拭い、頭を撫で、ぎゅっと抱き締めてくれた…魔法の手に。そして…すっかり白くなった透の頬に触れ、最後のキスをした。あたしからのキスはこれが二回目。…初めての時はすぐに離れてしまったけど、これが本当に最後のキス。すっかり冷たくなってしまった透の唇を温めるかの様に優しく、ゆっくりとキスをした。
「…ありがとう、絵理子。透、きっと今頃喜んでいるはずよ。」
花奏はそう言って再び涙を流す。とうとう棺に蓋が閉められ、周りにいる人達もボロボロと泣いていた。…透を目の前にしてまでまだ涙を流さないあたしの体の作りはどうなっているのだろう?悲しいし、明日から透に会えなくなるのも辛いはずなのに…。
< 243 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop