無理して笑うな
〈悠斗said〉
「キス…...した、よね…?」
横で、そんなミナの声が聞こえた。
おい、拓真
フリなんじゃなかったのか?
ミナは撮影で何度か顔を合わせていたから、前から少し話してはいたけどこんなに喋ったのは今日が初めてだった。
それに今年デビューしたばかりのStarlightというグループがお互い好きだったこともあって、お互いそのグループの誰が好きなのかを耳打ちしたりしてた。
それが、いけなかったとかはないよな?
「監督達は、角度的に見えなかったみたいだね。」
監督達は斜めから撮ってる。
でも、俺達がいるのは真横。
「そうだ、な…」
それしか、言葉が出なかった。
「あの2人、付き合ってるのかな?」
ミナが目を輝かせながらそう言ったけど、そうじゃないのは撮影が終わってすぐに分かった。
唯が拓真の胸を力いっぱい押し、拓真がふらついた。
2人は何か言い合ってるようだったけど、遠くて俺達には聞こえない。
「何、言ってるんだ…?」
拓真が最後に何か言い、唯の動きが止まった。
俺は、そのとき無意識に2人に向かって歩き出していた。
「悠斗!?」
ミナが俺の名前を呼んだが、そんなの気にしない。
唯が動きを止めた時点で、拓真が何を言ったのか直感で分かった。
(あいつ、告白したんだ…)
俺がこの後しようとしていたことを
拓真は先にやりのけた。
それが成功か失敗かは置いておいて
(唯は俺のだ…!)
彼女でもないのに
6年前、あんなことまで言ったのに
そう思った自分がいた。
まず何より先に、唯と話がしたい。
そう思った。