無理して笑うな

「え?あれ唯ちゃんなの?」




瑞希が人混みを指差して言った。




「そうだよ。唯と、同じBlueSkyの井上 蓮君。

食べ始めてすぐに隣のお客さんに気づかれちゃって。大騒ぎ。」




弘樹君は人ごとのように笑った。




「まあ、度々こんなことがあるおかげでうちは儲かってるからいいんだけどね。」




弘樹君の言った通り、店の壁にはそれは有名なアイドルや芸能人のサイン色紙がずらっと並んでいる。



その中にはもちろんBlueSkyの5人の色紙もあった。



そのとき、不意に弘樹君は人混みに目を向けると大きな声で言った。




「唯!こっちにおいで。」




人混みが静かになった。



それにつられて店の中もシーンとなる。




自然に人混みが2つに分かれると、そのむこうに座っていた2人が見えた。



ああ…



会ってしまった。
もう会わないものだと思っていた。



しかも6年ぶりの再会がこんな形だなんて。



神様、これはあんまりだ。





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