無理して笑うな

「あ、待てよ!」




俺は、気づけば席を立っていた。




母さんと弘樹君は不思議そうに俺を見ているし、瑞希はかの有名な唯と井上 蓮の顔を拝めたことで半分失神している。




俺は急いで店を出た唯と、その後を追うようにして着いて行った井上 蓮を追って店を出た。



そこには井上 蓮がいた。



唯の姿はなかった。




「あ、井上 蓮…」




俺は急いで出てきたために息が切れている。



しかしなりふり構ってられなかった。




「っ…唯は??」




井上 蓮はそれを聞いてニコッと笑った。




「先行っちゃったよ。俺が立ち止まったのも気づいて無かったみたい。」




俺がため息をついてうつむいたのを見て、井上 蓮は俺を裏口の方へ連れて行った。




「ごめんね、表は人が多くて。

俺は井上 蓮。唯の幼馴染みって君のことだったんだね。」




井上 蓮は相変わらずずっと笑っていた。



その顔は男の俺から見ても文句なしにかっこいい。




「唯からずっとブスって言った幼馴染みのこと聞かされててさ。もーうんざりするぐらい。ね、中村 悠斗君。」




…は?



なんで俺の名前を知っている。



そう思ったことが分かったのか井上 蓮はいっそう楽しそうに笑う。




「流星から聞いてるよ!何度か写真も見せてもらった。俺の親友、かっこいいだろ〜!って」




俺はとたんに恥ずかしくなった。



流星、次会ったとき覚悟しとけよ。







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