無理して笑うな
〈蓮said〉
「今日はありがとうございました。」
そう言って共演した事務所の先輩に頭を下げる。
「こちらこそ。それにしてもすごいね。最後のとりを務めるなんて。」
笑顔だが俺達のことを快く思っていないのが伝わってくる。
それは斗真と達也と亜依も感じたのか、俺と同じような苦笑いを浮かべたあとさっさと側を離れて次に向かう。
「また嫌われたねぇ。」
そんな達也のおどけた声に亜依がため息をつく。
「仕方ないよね…先輩を差し置いてとりなんて務めるから…」
「何言ってんだ。この世界は実力主義なんだよ。」
斗真が厳しい声をかけた。
そのとき、ポケットに入れていた携帯が鳴り響いた。
携帯を見ると知らない番号からだ。
「ちょっと電話してくる」
「はーい」
俺は少し静かな場所に来ると電話に出る
「もしもし」
『あ、俺、悠斗!流星に番号聞いた!』
悠斗の声は上ずっていて興奮気味
「どうかした?あ、唯にメールしたの?」
俺は意地悪く笑った。
しかし返ってきた声からそれはないことが分かった
『違う!唯と一緒じゃないのか?唯が倒れたかもしれない!!』
それを聞いたとたん足が勝手に動き出した
楽屋に向かっていることは自分が良く分かっている。
電話が終わるのを待っていてくれた3人は驚きながらもついてきてくれた。