無理して笑うな

宮森 拓真はあたし達と同じ歳のトップモデル



BlueSkyが所属するRedStars芸能プロダクションとはライバルにあたる事務所に所属しているが、蓮が何度か共演したことがあるので見たことがある。




人当たりも良く、いつも人に囲まれてたっけ。




「…分かりました。その顔合わせはいつですか?」




「ありがと、唯!顔合わせは明日ね。これ、台本だから。」




あたしに了解を取るまえからもう決めていたらしく



届いた台本に目も通していたらしい栗田さんはすっかり乙女の顔になってあたしを見ている。




「唯はね、桜ちゃんっていう女の子を演じるのよ。拓真君は陸っていう男の子。

2人は赤ちゃんのときからずっと側にいる幼馴染みで、中学に上がったぐらいからお互いのことを意識し始めるんだどね…」




あたしはほとんど栗田さんの話は聞いていなかった。



パラパラと台本をめくる。



陸は、高校の同級生の美玲にどうやったら桜に振り向いてもらえるか相談する。



でも陸のことが好きな美玲はなんとかしてそれを邪魔しようとし、桜はその手にかかって陸を信じれなくなる。



最後に2人が結ばれるシーンは、もちろんキスシーンもついているわけで



幼馴染みという設定は今あたしが1番やりたくないものだった。



…どうしても、悠斗の顔が浮かんでしまう。



何か言いたげだった悠斗をあたしは置いて来てしまった。



ちゃんと話を聞いていれば、何か変わったかもしれないのになぜか、聞きたくないと思っちゃったんだ。



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