無理して笑うな

〈唯said〉

スタッフや役者全員の顔合わせをする場所は撮影場所の1つでもある図書館だった。



この図書館は撮影スタッフが映画などの撮影に使うために作られた図書館で会議室や控え室、楽屋などの設備もある。



でも撮影がない日は一般に図書館として公開されていて、入場券を買えば撮影日でも見学できることになっている。



今日はあたし達ドラマグループの顔合わせがあるということで、入場券を買って入っている人も既にいると栗田さんは言っていた。




「ねえ、栗田さん。なんで顔合わせだけで入場料とるの?」




「そりゃあ、これがただのドラマじゃないからに決まってるでしょう?」




その図書館に向かうために車を出してくれた社長、ウィリアムの横の助手席で栗田さんは目を輝かせた。




「まさかこんないい話が自ら飛び込んで来るなんて!ねぇ、ビル。」




ウィリアムは、目線は前へ向けているものの笑顔で頷いた。




「そうだねぇ〜。まあ、頑張るんだよ唯。」




「はい。」




あたしはこくん、と頷く。



今日は金曜日。



本当は学校があったけど、あたしは「撮影があるから」と言って休んでしまった。



でもあたし達BlueSkyが通っている学校は芸能科の学校だからそういう子はたくさんいる。



クラスが全員集まったことなんて入学式や始業式ぐらいしかない。




「唯、ついたわよ。」




「はーい。」




図書館は少し郊外に出たとこにある。



あたしが車から降りると、もう少しで梅雨入りになるどんよりとした空気が漂っている。




「なんでこんな時期に撮影開始になるかな。」




そんなことを言っている間に栗田さんとウィリアムも車から降りてきて



あたし達は3人で図書館に入った。





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