無理して笑うな
図書館に入ってすぐ、1人の男の人があたし達に近づいてきた。
「やぁ、栗田さん!」
「ああ監督!」
監督は白髪の混じった優しそうなおじさんで、あたしはホッとする。
前の映画の監督のような厳しさはまずなさそう…。
栗田さんは桜の役を引き受けたときに会ったらしい。
「あなたが社長さんですね。で、こちらが唯さん。」
「初めまして。RedStars社長のウィリアムと申します。」
ウィリアムが慣れない日本語で挨拶する。
「初めまして。嵯峨山 唯です。」
「初めまして。監督の明石 雅俊と申します。」
「スイマセン。美玲役のミナですが、今日はハズセナイ仕事が…」
ウィリアムが申し訳なさそうに言う。
「いやいや!ただの顔合わせですし。
まぁ唯ちゃんが出られないと言うなら話は別ですが。なんたって主役ですから。」
「初めまして。」
そのとき、あたし達の後ろから凛とした女の人の声が響いた。