無理して笑うな
あたし達が振り返ると、メガネをかけたスーツの似合う若い女の人が姿勢良く立っている。
「こんにちは、監督。太田芸能事務所の太田 葉月です。」
「ああ、太田芸能事務所の社長さん。初めまして!」
監督は相変わらず笑顔で受け答えする。
あたしが太田社長を見ていると、向こうは無表情でこっちを見てくる。
「あなたが嵯峨山 唯さんね。BlueSky、いいグループね。」
「ありがとうございます。」
あたしがお礼を言うと、太田社長の後ろから笑い声が聞こえた。
「社長、ライバル会社のユニット褒めてどうするんだよ。」
「うるさいわよ、拓真。本当にいいと思ったから褒めただけじゃない。」
太田社長の後ろからひょこっと顔を出したのは宮森 拓真。
身長は軽くあたしより頭1個分ぐらい高くて、自然に見上げてしまう。
「こんにちは、嵯峨山 唯ちゃん。
俺達同じ歳だし、せっかく一緒にメイン務めるんだから唯ちゃんって呼んでいい?」
第一印象、見た目はそんなにだけど中身はものすごくチャラい人。
「うん、いいよ。あたしも拓真君って呼ぶね!」
でも、ここは笑顔笑顔。
こういうところから人間関係作っとかないと、これからやってけない。