無理して笑うな

拓真君も笑顔になった。




「良かった、明るい人で。性格きつい人だったらやりにくいって思ってたんだ。」




拓真君の笑った顔はやっぱり綺麗で。



栗田さんなんか見とれちゃってるよ。




「こんな所で立ち話もなんだから、とりあえず入りましょう。」




監督の一声であたし達はゾロゾロとロビーを抜けて会議室へ移動する。



その間にも入場料を払って図書館に入ったファンの人達から握手やサインを求められたり、一緒に写真を撮ったり。



会議室まで3分もかからないはずなのに、拓真君と2人でドアを閉めたのはロビーに入ってから30分後。



拓真君はゼェゼェ息を切らしながら笑っている。




「ネットで見たけど、ここの入場料めっちゃ高くなかったっけ?」




「知らないよ〜いくら?」




「いや、細かいことは知らないんだけどね。」




そんなあたし達を見てスタッフの人達はクスクス笑った。




「大変ねぇあなた達。ほら、席について。スタッフの自己紹介始めるわよ。」




1人の女性スタッフの言葉であたし達は空いてる椅子に並んで座り、周りは一気に静まりかえる。



それから監督の自己紹介から始まり、陸と桜が通う高校の先生役、2人の親友役から衣装や証明など裏方のスタッフまで全員が立ち上がって自己紹介。




「さて。最後はこの漫画の映画化にあたり、主役を引き受けてくれた2人ね。」




監督の声と視線を感じてあたしと拓真君は同時に立ち上がった。




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