無理して笑うな
「太田芸能事務所の宮森 拓真です。
今回は陸役をやらせて頂けることになりました。よろしくお願いします。」
拓真君がニコッと笑って頭を下げた。
拓真君は悠斗とは正反対だなぁ。
このとき、あたしはなぜかそう思った。
悠斗ならこんなニコニコ笑ったりしない。
小学生のときはいつもクールで何を考えてるか分からなくて、たまに怖いと思うこともあった。
そんな悠斗だから、周りの子達から誤解をされることも多くて。
『大人ぶって気持ち悪いんだよ!』
そんなことを言われてもなんともない顔をして、家に帰るときだけ悲しそうな顔をする悠斗を理解してあげれるのはあたしだけだと
勘違いしていた自分がいた。
でも拓真君ならそんなこと言われることもないぐらい。
顔や姿は悠斗以上に大人っぽいのにとても明るくて、もうみんなに懐かれてる。
「あたしは桜役、RedStars芸能プロダクションの嵯峨山 唯です。よろしくお願いします。」