無理して笑うな
周りから拍手がおこって監督がニコッと笑った。
「よし、全員済んだね。
美玲役のミナさんには撮影本番に挨拶してもらいます。
じゃあみんな、さっそく準備に取りかかって下さい。役者さんは大体台本覚えて来てると思うから、みんなで工夫して役合わせしちゃって。」
その監督の言葉で全員が立ち上がり、移動して行く。
「俺達も行こう。閲覧室空いてると思うから。」
「唯さんと仲良くやるのよ、拓真。」
相変わらず無表情の太田社長が拓真君を見て言った。
「はーい。分かってるよ姉さん。」
…え??
「姉さん?」
あたしはキョトンとして拓真君と太田社長を交互に見た。
「ん?…ああ、俺達姉弟。」
拓真君が笑いながら教えてくれる。
「俺の本名太田 拓真なんだ。葉月姉さんとは…7歳差?」
「ちょっと、姉の歳ぐらい覚えておきなさいよ。」
太田社長は立ち上がるとあたしに手を差し出した。
「改めてよろしく、唯さん。ライバル社の子に言うのもなんだけど、私BlueSky結構好きなのよ。」
「あ、唯でいいですよ?」
あたしが握手を返しながら言うと、太田社長は少し驚いたようで
無表情だった顔に初めて表情が出た。
「唯さんって言われ慣れてないし、年上の人に言われるのも慣れてないから唯で大丈夫です。」
「そう。…ありがとう。じゃあ唯って呼ばしてもらうわ。あ、後でメールのアドレス教えて下さる?」
「もちろん!あたしも葉月さんって呼んでいいですか?」
「ええ、もちろん。」