ツンデレツン
「大体、幼なじみってだけで何でそんなに仲良くしなきゃいけないワケ?」
「そんな事言わないの。アンタだって良くしてもらったでしょ?」
「大和じゃなくて大和のお母さんにはね」
私は無愛想に踵を返すと
おせっかいなお母さんを置いて
校内に足を踏み入れた。
フワっと柔らかい空気が私を包む。
甘い桜の香りがした。
大きな校舎を前に深呼吸をする。
吸い込んだ空気が、生まれてきた中で
一番澄んでいて心地よかった。
「アンタねぇ、少しは愛想よくできないの?」
お母さんが後ろから溜息混じりに行ってきた。
溜息をつきたいのはこっちなのに、
まったく私のお母さんは
子供の気持ちを全然分かっていない。
高校生にもなって幼なじみと写真撮影なんて。
しかも仮にも相手は男だよ。
「私は社交辞令はできるから、その人にふさわしい態度を取るの」
「そんなの猫被ってるだけじゃないのよ」
太陽が容赦なく雲の隙間から顔を出している。
お母さんは花柄のハンカチで額をふいて、
持っていた小さいカバンにそれを入れた。