姫は永遠の眠りについた。
「入院しましょうか」


 お医者さんのその言葉を聞いた時、嫌な予感はしていた。

 でも、まさかうちの子に限ってそんなことになってしまうだなんて、思いたくない。信じたくない。

 でも、“入院”という形が、今のこの子にとって1番の最善策なら……と、私と家族はそれに承諾したのは、もうすでに数日前になる。

 そして、数日後の今日の朝、お医者さんから息を引き取ったという連絡の電話があった。

 こうなることが分かっていたのか、その事実が信じられないでいたのか、私の目から涙が流れることはない。

 母さんがお医者さんと話している途中、普段はちょっとしたことでは泣かない母さんが泣いているのを目の当たりにして、胸がぎゅーっと痛んだ。


「つらい思いをしたね」

「でも、よくがんばったね」

「ほら、家に帰ってきたよ」

「おかえり」

「今までありがとう」

「天国にいるおじいちゃんやおばあちゃんに、またブラッシングをしてもらえるね」

「おじいちゃん、おばあちゃん、ラッキーちゃんをよろしくね」


 泣きながら言う母さんの語りが優しくて、労しくて、思わず息が出来なくなった。
< 2 / 5 >

この作品をシェア

pagetop