姫は永遠の眠りについた。
 母さんが永遠の眠りについた愛犬のラッキーを家の中に置き、外へ出た時、私は蓋を閉じている箱に、そっと手を伸ばした。

 蓋を開けると、横たわるラッキーに覆いかぶさるように、白い布がかけられていた。

 白い布をめくると、本当は眠っているんじゃないかと疑うほどに安らかな顔をした、ラッキーがいた。

 その頭を撫でたくて、再び手を伸ばすと……冷たい。

 ああ、本当にラッキーは死んだのか。死んでしまったのか。あんなに元気に走り回っていたラッキーは、もうここにはいないんだ……。

 私の中にある、何かの糸がプツンッと切れて、ぼろぼろと涙が溢れ出た。

 冷たくなった頭を撫でながら、ぽたぽた、ぽたぽたと涙はとまらなくて……その雫はラッキーの顔の上に落ち、ぴちょんと跳ねた。


「私の家族の一員になって、あなたは幸せでしたか?」


 喉が焼けるように熱くて、それは直接、言葉にはならなかった。

 代わりに何度も、何度も、心の中で問い掛ける。


「私の家族の一員になって、あなたは幸せでしたか?」


 当然ながら、返事はない。

 そんなこと、分かっている。分かっているはずなのに、問わずにはいられなくて……私は何度も、泣きながらそう問い掛けた。
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