あかいもの。
「おい、冬也。」
俺は寝起きの低いテンションのまま、冬也に話しかけた。
「なんだ? てか寝癖すごいぞ。 こっちこい直してやる。」
「人の話を聞け。」
こいつも朝から元気だな。
お節介な冬也に俺は呆れながら、それでも寝癖を直すのは面倒なので洗面所へ向かう。
「大地が俺に用だなんて珍しいな。どうした?」
俺の髪の毛に水がつけられる。
冷てぇ。
「あいつのことだ。何かわかったか?」
あいつの話を出すと、冬也の顔つきが変わる。
「そのことなんだが、多分隠されてあるんだよ。」
隠されてる?
誰がそんなことを。何の為だ。
「隠すにしても意図がわかんねぇよ。」
冬也も同じことを思っているらしい。
奈津も何も掴めなかったと言っていた。
これは多分ワケありだな。
「何もなければいいけどな。」
目の前の鏡を見れば、おれの寝癖は綺麗に元どおり。
「そうだな。さんきゅ。」
これはしばらくゆっくりできないな。