あかいもの。
「なっちゃんはもう戻って来ないんだって。
なっちゃんは帰って来ないって言うんだもん。」
今にも泣きそうな声を出す響くん。
よしよしとあたしは頭を撫でる。
「そっか。それで寂しくなって会いに来たのね。」
「うん。」
奈津のお母さんがどんなつもりで言ったのかは知らないけど、もう会えないなんて事はないと思う。
だって現にこうやって二人は、会いに来ているのだから。
「おい、クソガキ。」
話を聞いていた男子組の中、明希が二人に近寄る。
「ちょっとどけ。」
・・・そしてあたしを押しのけて、二人の前に屈みこむ。
「あのな、がきんちょ。確かに奈津に会いたかったかもしれねぇけどな。
家のヤツに黙って出てくるのはよくねぇ。」
「・・・うん。」
怒られるんだと、わかった様に二人はさらにシュンとなる。