愛された先パイ
4
☆☆☆
俺はその日を境に、ヒヨコと呼ぶようになった。
ヒヨコは後輩なこともあり、皆の前では「先パイ」と呼ぶが、2人きりの時は「リク」と呼んでくれる。
小さくて儚い彼女を、俺が守りたい。
俺らの関係は、順調だった。
しかし最近。
俺の前に現れる女がいた。
俺はクラスで学級委員を務めている。
その女は、生徒会長だった。
3年生で、名前は
楠木梓(くすのき・あずさ)。
「楠木先輩」と呼ぶと怒るので、「梓さん」と呼んでいる。
梓さんは、何かと理由をつけて、俺を夜遅くまで残そうとする。
そのため、最近俺はヒヨコと帰っていない。
「今日一緒に帰れない」とヒヨコに告げると、ヒヨコは決まって悲しそうな表情を浮かべ、頷いて帰って行く。
その顔を俺は見たくない。
ヒヨコに悲しそうな顔をさせるために、俺はヒヨコと付き合ったのではない。
ヒヨコの花のような笑顔を守るため、俺は付き合ったのだ。
意味ないではないか。
今日も、俺は梓さんと残って、明日クラスで配る書類をホッチキスで止めている。
ヒヨコには危ないから、先に帰らせた。
俺だって、ヒヨコと帰りたいよ・・・。