愛された先パイ
「俺のこと、リクなんて呼ばないでくれない?
リクって呼んでいいのは、ヒヨコだけだから」
「ヒヨコ・・・?」
「俺の彼女」
その瞬間、ざわめき始める教室。
「手とか出したら許さないから」
一応念を押しておく。
あんな可愛いヒヨコの顔や綺麗な身体に傷でもつけたら、困るから。
「成島くん」
有明を押し込んで俺の所に来たクラスメイト。
鹿野美和(かのう・みわ)。
黒い髪をストレートに伸ばしている。
俺と同じ学級委員を務めているから、話すことも多い。
クラス順位は俺に続く2位だけど、学園順位だと5位ぐらいの頭の良さ。
大人しくて目立たないけど、しっかり者という意見が出て、学級委員になった。
「どうした」
「プリント、教えてくれる?」
「・・・良いけど」
鹿野は有明と違って真面目な方だから、プリントに落書きなんてことはしていなかった。
有明を含む周りの連中は、俺が鹿野に勉強を教える姿を、不思議そうに眺めていた。