愛された先パイ







「どれ?」




その人はまるで転んだ人の手を引くような仕草をして、手を差し出した。

た、例えが悪くてわかりにくいかもしれないけどっ。

それほど彼はかっこよかった。



彼は紙を見ると、すぐさま「こっち」と言ってくれた。

ついて行くと、席に着いたらしく、



「ここが妹さんの席だよ」



と言って、優しく微笑んだ。

周りから、「かっこいい」だの「キャー」だの黄色い声が聞こえた。



入学式が始まっても、私の頭から彼が離れることはなかった。






「ねえお姉ちゃん」

「んん?」



入学式の後、お姉ちゃんが珍しく、あたしをファミレスに連れてきてくれた。

入学祝いだって。

だからお姉ちゃん好き!



「あの入学式で案内してくれたのって、お姉ちゃんの彼氏?」

「はあ?んなわけないじゃない」


ドリンクバーでいつもお姉ちゃんはコーラとメロンソーダとオレンジジュースを混ぜた飲み物を作る。

得体の知れない飲み物を、お姉ちゃんは飲んだ。








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