愛された先パイ
俺の話を目を見開きながら聞いていたアツシは、徐々に目を伏せて言った。
「・・・美亜」
「なぁに?」
「・・・この写真、説明してくれる?」
アツシがポケットから出した写真。
それには、色々な男と手をつないだり腕を絡ませながら歩く、鹿野美亜が写っていた。
「・・・!?」
「別れたいのなら別れよう?
お互いの・・・ためだと思うんだ」
「・・・」
「美亜」
鹿野美亜は写真をアツシから奪い取ると、それを粉々になるまで破り、道端に捨てた。
呆然とそれを見送るアツシを、鹿野美亜は笑い、そのまま何も言わずに行ってしまった。
「・・・」
「アツシ」
「・・・今井先輩」
「リク・・・ヒヨコちゃん・・・ありがとな。
忙しかっただろ?今日も」
「俺はヒヨコに会えるから構わないけど・・・」
「私も・・・リクに会えるから・・・・」
「本当、俺2人が羨ましいわ」
この時、俺はこの間アツシが言っていた、「相思相愛が羨ましい」の意味が分かった。
アツシはその時すでに、鹿野美亜のことに気が付いていたんだ。
自分がいくら相手を愛しても、向こうが自分を愛してくれなければ、相思相愛の意味が成り立たない。
だから、俺とヒヨコが羨ましかったんだ・・・・。