愛された先パイ
慌てたように職員室へ向かうアツシ。
ってかアイツ、課題出していなかったのか。
全員提出って、担任も言っていたのによ。
「・・・あの、リク先パイ」
「どうした?」
「・・・メアド、交換しませんか?」
「良いけど・・・」
ヒヨコちゃん、携帯電話持っていないって・・・。
「あ・・・さっきのは嘘です」
「嘘?」
「はい。
まだ出会ったばかりの人に、メアドを聞かれても、交換する気はないので、持っていないと答えるようにしているんです」
「まだ出会ったばかりって・・・。
俺もだと思うんだけど」
「リク先パイは良いんです。
案内してくれましたし、お優しいですから・・・」
「・・・確かに俺、アツシに比べればチャラくないな」
「はい。
だから安心できるんです・・・」
「じゃあ良いよ」
お互いにスマホを出し、赤外線でメアドを交換する。
「何かあったら、メールしてね。
気軽に会話でも良いよ」
「はいっ!!」
ニッコリ花が咲くように笑ったヒヨコちゃんは、1年生のクラスがある階へと降りて行った。