グレープフルーツを食べなさい
「先輩、何作ってんの?」

「アクアパッツア」

「何、そんなん家で作れんの?」

「だから今作ってるじゃない。ちょっと上村、適当にお皿取って」

 私が頼むと、上村はまるで自分の家のキッチンにいるかのようにスムーズに皿を探し出す。

「これでいいの?」

「ありがとう」 

 上村は、以前にも増してうちに入り浸るようになっていた。

 なんだかんだ言っても、私も自分一人で料理して食べるより、誰か食べてくれる人がいる方が作り甲斐がある。

 元々料理は好きだったし、家庭の味に飢えているらしい上村に毎週のようにご飯を食べさせているおかげで、料理のレパートリーも広がった。


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