グレープフルーツを食べなさい
「ねえ、上村が新プロジェクトのメンバーに入ってるって本当?」

 食事を終え、食器をキッチンまで運んでくれた上村に、私は食後の珈琲を手渡した。

「入ってますよ。俺の本社異動はそのためですし」

 そう言ってカウンターの端にもたれ、上村はすぐさま珈琲を口に含む。

「そうだったんだ。随分上から目を掛けられてるのね」

「目を掛けてもらってるかどうかはわかんないけど、俺だってそれなりに努力はしてますよ」

 上村に『努力』なんて言葉、全く似合わない。

 でもそれは嘘ではないんだろう。

 支社でのことはわからないけれど、外食部に異動してからの上村は本当によくやっていると思う。

 その証拠に、今月は上村が外食部のトップを独走している。

「オアシス部での主な仕事はテナントの選定と出店交渉ですからね。外食部での仕事は勉強になるんですよ」

「確かに上村、今月頑張ってるもんね」

 異動してきて早々あんな成績を出されたら、元からいた社員は堪らないだろうな。

 私の知らないところで上村が一体どんな努力をしているのか、少しだけ興味が湧いてきた。

< 102 / 368 >

この作品をシェア

pagetop