グレープフルーツを食べなさい
「先輩のように人の動きや考えを読んで、先回りして行動できるような補佐がみんな欲しいんですよ」

 そう言ってマグを持ち上げる。どうやらさっきの珈琲のおかわりのことを指しているらしかった。

「それはまあ……営業の人たちが仕事をしやすい環境をつくるのが、私たち補佐の役目だと思うし……」

「うちの女性社員たちの中で、どれだけの人がそんな意識で仕事してるでしょうね?」

「はは……」

 上村の問いに、私は苦笑いで答えることしか出来なかった。

 私自身いつも口を酸っぱくして言っていることなんだけど、後輩達にはなかなか伝わらない。

「与えられた仕事をこなしただけで『自分はちゃんと仕事してる』って満足しちゃう子があまりにも多いんだよね……」

 思わずため息が漏れる。

「先輩が選ばれたりしたら、面白いことになりそうなんですけどね」

「何それ、なんか嫌な感じ……」

 上村のにやけた表情に、私はなんだか妙な胸騒ぎを覚えた。


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