グレープフルーツを食べなさい
「何ですか、これ」

 書類の真ん中には『オアシスタウン事業部への異動を命ずる』と書いてある。

「……ええ?」

「というわけだから。引継ぎよろしくな」

「ちょ、ちょっと待ってください。これ、ホントに私のですか?」

「そうだよ、おめでとう」

 部長は能天気に握手を求めてくる。

「上村の異動はうちに来る前から決まってたことだけど、まさか三谷まで連れて行かれるとはなあ。正直うちには大打撃だけど、せっかく選ばれたんだから頑張れよ」

「……はい、ありがとうございます」

 まだ、信じられない気持ちだった。手渡された書類をまじまじと見る。書類の上部には、間違いなく私の名前が書かれている。

「ずっと三谷が中心になって外食部を引っ張ってきてくれたからなあ。俺は本当は、三谷を外に出したくないんだけどな」

 そう言って、部長は鼻の頭を掻く。


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