グレープフルーツを食べなさい
 ――それに、上村のあの視線。

 今回のトラブルの原因は、完全に私だと思われている。

 上村の冷ややかな表情を思い出すだけで、胸がズキズキと痛んだ。

 私は、自惚れていたのかもしれない。

 自分はいっぱしに仕事の出来る、会社にとっても役に立つ人間であると、いつの間にかそう思い込んでいた。

 ……上村のこともそう。

 少しずつ一緒に過ごす時間が増えて、何も言わなくてもお互いの性格も何もかも分かり合っているつもりになっていた。

 実際はどう? 私の目は節穴だ。

 先ほどの異動話に寄ってもたらされた喜びは、もうすっかりどこかに消え失せていた。


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