グレープフルーツを食べなさい
 目の前に雑然と並んだ机の群れに、焦りと美奈子への怒りで頭がカッとなる。

 こうしている間にも、時間は刻一刻と過ぎていく。

 一人で机を動かして奮闘していると、トントンと会議室のドアをノックする音がした。やっとヘルプが来たのかと期待を込めて振り向くと、そこには仏頂面の上村が立っていた。

「一人で何してるんですか」

 上村と話すのは一週間ぶりぐらいだ。美奈子を庇ったあの日の上村を思い出して、なんだか気まずい。

 私は、上村に背を向けた。

「なんでもない」

「なんでもないって、部長の言ってた会議二時スタートでしょう? ヘルプは?」

 会議室に入り、荒れた室内を見回して私に尋ねてくる。


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