グレープフルーツを食べなさい
「私の仕事だから」

 一人で無理やり長机を持ち上げた。思っていた以上の重さに耐えきれず、足元がふらついた私は、また長机を床に下ろした。

「相良のしわざ?」

「え?」

 振り向くと、上村がやっぱりね、と言いながらため息を吐いた。

「ホントあいつら成長ねえな。せっかく味方のフリしてやったのに」

「……味方のふり?」

「そうですよ。あそこで俺が先輩庇ったりしたら、余計に先輩の立場が悪くなるだけでしょ」

「そうだったんだ……」

 上村は美奈子の肩を持ったふりをして、実は私を庇ってくれていたんだ。

 上村に軽蔑されたと勘違いして、私はここ数日上村のことをすっかり避けていた。


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