グレープフルーツを食べなさい
「……何?」

「やっぱりダメよ、間に合わない。お客様にお茶をお出ししなきゃいけないもの」

「なんだ、そんなこと? そんなの他に手が空いてるやつに頼めばいいじゃん」

 上村が呆れた顔で言い返してくる。

「私じゃなきゃダメなのよ。得意先の専務がお茶にうるさい人だからって部長が……」

 慌てる私を落ち着かせるように、上村が私の肩に手を置いた。

「わかった。お茶は俺がやる」

 まるで、小さな子どもに言い聞かせるように、私の目をじっと見つめてくる。

「でも……私が部長に頼まれたのよ」

「データは先輩じゃないとわかんないでしょ。これ以上間違いがあったらいけないし。それに先輩、俺の淹れたお茶うまいって言ってくれたじゃん」


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