グレープフルーツを食べなさい
 上村は私の手伝いが終わると急いで外食部に戻っていった。

 外出の予定はないとは言っていたけど、午後の予定を狂わせてしまったことに変わりはない。せめてものお礼にと、今度は私が上村にお茶を淹れてあげることにした。

 私は会議室を出ると、そのまま外食部のあるフロアの給湯室へと向かった。

「おまえらなあ、ホント何考えてんだよ!」

 突然聞こえてきた怒声に耳を疑った。声は給湯室の中から聞こえてくる。

 そっと中を覗くと、今日私と一緒に会議の準備に入るはずだった後輩たちと数名の女子社員、そしてふてくされた顔で立つ美奈子の姿が見えた。

「悔しかったら仕事で見返してやれって言ったけど、おまえらの仕事は他人の邪魔することなのか?」

 彼女たちを厳しく叱責しているのは、なんと上村だ。普段温厚な上村の激しい剣幕に、美奈子を除く女の子たちは皆涙を浮かべている。


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