グレープフルーツを食べなさい
「三谷さん、どうです。オアシス部には慣れました?」

 そう私に話しかけるのは、エネルギー部から異動してきた岩井田さんだ。

 彼は私より四つ年上の32歳。癖のない黒髪に黒いセルフレームの眼鏡を掛けた温厚な印象の男性だ。

 オアシス部立ち上げの前から、エリート揃いのエネルギー部からわざわざ異動を志願した男性社員がいると、社内でも話題になっていた。どうやらそれが岩井田さんらしい。

 部長からの指示で、私は来週から岩井田さんの補佐に付くよう言われていた。

「はい、おかげさまで。皆さん仕事ができる方ばかりなので、見ていてとても勉強になります」

「そう、それは良かった」

 私がそう答えると、岩井田さんは満足そうに微笑んだ。


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