グレープフルーツを食べなさい
「岩井田さんはいかがです? エネルギー部とは勝手が違って大変なんじゃないですか」

「確かに扱うものから違いますからね。でも僕には夢があって」

「夢、ですか?」

「友人に設計をやってるやつがいましてね。そいつといつか古民家や古い商店のリノベーションの仕事をやりたいんですよ」

「……それはまた、随分これまでとは違うお仕事ですよね」

 コクコクと頷きながら岩井田さんはビールを飲む。彼の話はなかなか興味深い。

「ここでの仕事も直接は関係ないかもしれないけど、色んな現場を見ておきたくて。三谷さんはないんですか、そういうの」

「と言いますと?」

「将来やりたいこととか夢とか」

「私は……そういうの考えたことなかったです」

 正直なところ、今は移ったばかりのオアシス部の仕事を着実にこなしていくこと、そして母のことで頭は一杯だ。


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