グレープフルーツを食べなさい
「そろそろ終わりかな。三谷さんは二次会どうされるんですか?」

「あー、私はカラオケとか苦手なんで遠慮しておきます」

「そうですか、それは残念」

 そう言って岩井田さんはにこにこと笑っている。気を遣ってか、無理やり二次会に誘ってくる人もいるけれど、岩井田さんはそんな風に押しの強い人ではないらしい。

 大丈夫、この人となら上手くやれそう。

 終始穏やかな岩井田さんを前に、安心した私は自然と笑みを浮かべていた。

 岩井田さんと連れ立ち、デパートのエレベーターを下る。

 外に出ると、シャッターが閉じた店の前で、私たちよりも先に降りたグループが賑やかに二次会の相談をしていた。

「それじゃあ、僕は二次会に行きますね」

「はい、お先に失礼します」

 私は岩井田さんに一言お詫びをして、ちょうど停まったタクシーに乗り込んだ。


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