グレープフルーツを食べなさい
「またグレープフルーツ?」

「案外うまいんだなと思って」

「ふうん。まあ、ありがとう」

 前回、うちの部屋で食べてみて、そんなに気に入ったのか。

 ガサゴソと袋から取り出し、とりあえず冷蔵庫にしまうと同時に、冷蔵庫の中味をチェックする。

 ……上村の胃袋を満たすことができるようなもの、入ってたかな。

「飯って言ったって、まだ私なんの準備もしてないわよ」

「これから作るんだ? じゃあ俺、食べたいものリクエストできますよね?」

「はあ、あんた何様!?」

 私の言葉に、上村はぶはっ! と盛大に吹き出した。

「やっぱ先輩おもしれえ」

 私の何がそんなに面白いのかわからないけれど、二人でいるとき、上村はよく笑う。

 まあ、会社で見せる澄ました作り笑いよりはよっぽどいいんだけど。


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