グレープフルーツを食べなさい
「それで、リクエストは何。唐揚げ? ハンバーグ?」

「ちょっと。何ですか、その子供メニュー」

 そう言うと上村はまたケタケタ笑う。

「だって、上村よく食べるから」

「そういうのもいいけど、たまには和食が食いたいっすね」

「和食ねえ。でもそんなので、上村はお腹膨れるの?」

 上村からのリクエストを受けて、もう一度冷蔵庫を開けたみた。

 ……うん。和食なら有り合わせのものでなんとか作れるかも。

「家庭の味に飢えてるんですよ」

「それなら、実家にでも帰ればいいのに」

 上村の返事がない。不思議に思い一旦冷蔵庫を閉め振り向くと、上村は黙って風に揺れる浴衣を見つめていた。

「……先輩、浴衣着て祭りにでも行くの?」

 私は窓辺へ行き、浴衣をハンガーから下ろした。あまり遅くまで干していると、湿気が入ってしまう。

「まさか、ただの虫干しよ」

「虫干し?」


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